VOCとは何か。生活空間における規制にはどのようなものがあるか

VOCとは何か。生活空間における規制にはどのようなものがあるか

VOCとは、Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)の略称で、常温常圧で空気中に揮発しやすい有機化合物の総称です。「揮発しやすい」という物理化学的性質に着目した分類であり、特定の一物質を指す名称ではありません。数百種類以上の有機化合物がVOCに含まれます。
代表例としては、塗料、接着剤、シンナー、洗浄剤などに含まれる溶剤成分や、それらを使用した建材や家具から放散する有機化合物が挙げられます。これらは室内空気汚染や作業環境に影響を与える場合があり、いわゆるシックハウス問題との関連でも注目されてきました。
なお、VOCは室内空気質の問題だけでなく、大気中では光化学反応を起こして光化学オキシダントや二次粒子(Particulate Matter:PM)の生成に関与する前駆物質としても位置づけられています。このため、環境行政上も重要な管理対象となっています。

日本における主な規制・制度

VOCは「VOCという名称で一括して規制されている」わけではなく、場面(建材・大気排出・作業現場など)や健康影響に応じ、複数の法律・制度で管理されています。
生活空間に関係する制度は主として、(1)発散源対策(建築基準法)と(2)室内の濃度の指針値(厚生労働省)の二本立てで構成されています。

 

(1)建築基準法(シックハウス対策)
2003年の法改正により、以下の対策が導入されました。

  • ホルムアルデヒドを発散する建材の使用制限
  • 換気設備(24時間換気)の設置義務化

建材には、ホルムアルデヒドの発散量に応じて F☆☆☆☆(最も低い)などの等級区分 が設けられ、建築設計時の判断基準となっています。なお、同改正では有機リン系殺虫剤クロルピリホスについては原則使用禁止とされました。(現在では、クロルピリホスは難分解性・生物蓄積性などの性質が問題とされ、国際的には残留性有機汚染物質(POPs)としてストックホルム条約の規制対象にも追加されています)。建築基準法による規制は、主として発散源対策を目的とするものです。

【参考】
建築基準法に基づくシックハウス対策について

 

(2)室内濃度指針値(厚生労働省)
厚生労働省は、室内空気中の下記のような化学物質について指針値を設定しています。

  • 13種類の化学物質
  • 総揮発性有機化合物(TVOC:Total VOC)

これは法律による強制力や罰則を伴うものではありませんが、住宅設計、建材・家具の選定、自治体の調査などで重要な目安として活用されています。
※現在指定されている13物質:ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、p-ジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、フェノブカルブ

【参考】
厚生労働省シックハウス対策

 

その他の関連法令
ヒトがVOCにばく露する事に係わる関係法令としては、下記の法律があります。
 

(3) 大気汚染防止法(工場・事業場の排出規制)
2006年の改正により、VOC排出抑制制度が導入されました。

  • VOC排出量の削減
  • 排出抑制のための設備や管理基準

が制度化されました。
主に塗装業、印刷業、化学工場などが対象で、生活環境の大気待機保全を目的としています。

【参考】
環境省『揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制』

(4) 労働安全衛生法(有機溶剤中毒予防規則(有機則))
有機溶剤※を取り扱う作業場では、以下が義務付けられています。
(※ここでいう「有機溶剤」は揮発性の有無で定義される概念ではなく、法令上指定された物質群を指します。)

  • 作業環境測定
  • 局所排出装置など換気設備の設置
  • 保護具(マスク・手袋等)の使用
  • 有機溶剤作業主任者の選任(対象作業の場合)

これは、作業者の健康障害(溶剤中毒など)を防ぐための制度です。

【参考】
厚生労働省『有機溶剤を正しく使いましょう』